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ゆうめいの上演あとがき
養生を、終えて
脚本家・劇作家・造形作家 池田 亮

俳優 丙次

​アートディレクター・映像作家 りょこ

ゆうめい『養生』2024年2月17日[土]〜20日[火]

下北沢 ザ・スズナリ 第34回下北沢演劇祭参加作品

HP:https://www.yu-mei.com/yo-jo

※この「あとがき」は、『養生』本編のネタバレを多少含みます。ですが、本編をご観劇された方も、ご観劇されていない方も、お読みいただければ幸いです。

2024年2月17日[土]から20日[火]にかけてザ・スズナリにて4日間上演した、ゆうめい『養生』 。第34回下北沢演劇祭参加作品である今作は”夜間勤務の現場”が基となる舞台作品だった。「ゆうめいの観劇まえがき」では、どんな人が・どんな経緯を経て・どんなチケット料金で・どんな作品を立ち上げていくのかを解説した。この「ゆうめいの上演あとがき」では、作・演出・美術を担った池田 亮、出演・制作総指揮を担った丙次(田中祐希)、メインヴィジュアルを担ったアートディレクターのりょこが、上演を終えるまでの創作や全体のディレクション、プロモーションについてを大ボリュームで明かす。特別公開のエンディングムービーと共に“観劇後の楽しみ”や、今後の“観劇の楽しみ”をより発見できるかもしれない。

 

『養生』作・演出・美術 合同会社ゆうめい代表社員 池田 亮

上演を終えて

こんにちは池田 亮と申します。この度『養生』の作・演出・美術を担いました。この「あとがき」では、あとがきといいつつ、ご観劇された方だけではなく、ご観劇されていない方も(多少本編のネタバレがございますが)お読みいただければ幸いです。

 

制作総指揮の丙次や、アートディレクターのりょこによる、ゆうめい全体のディレクションについての記述もございます。自分のパートでは主に“どのように『養生』の創作に取り組んでいったか”をお届けします。

ご観客の皆様へ向けてのみではなく、演劇に関わる皆様へ向けての資料として、作品を上演するまでに至る全体についての記述もございます。舞台芸術や小劇場の関係者の皆様へ少しでも参考になればと思い、以下さまざま公開しております。

 

「上演することって?」という、ゆうめい版エッセイとしてもお読みいただけますと幸いです。

うまくいったことだけではなく、うまくいっていないことも書いています。そのような自分たち、ゆうめいの次回作にもどうかご期待ください。

夜勤経験とウンゲツィーファの『あらしのよるに』

当日パンフレットで書きましたが『養生』は夜勤体験と、主演であるウンゲツィーファ主宰の演劇作家・本橋 龍さん作詞作曲の『あらしのよるに』という歌が根幹的な部分が生まれたきっかけでした。

 

いつか舞台で描こうと思っていた、過去の夜勤体験から書きます。

 

お金欲しさに夜勤を連勤していた彫刻学科の美大生の頃。「今20連勤してます」とか、あるあるな連勤自慢を常にしたがるぐらいスタジアムのコンサート設営と撤去作業にどっぷりと浸かっていました。本業の彫刻は学内や教授からの評価も低く、周りにはすごい作品を作る人が沢山いたので、自分には美術が向いていないからと、新しく向いているものを考えていた時期でした。いい作品が全く生み出せず悩んでいたら、ゴミ屋敷の部屋でタバコを吸い過ぎて気管支炎になってしまい、こんなことになるなら作品を作ることを諦め、お金もないのでとりあえず社会経験をぶち込もうと出勤申請を後先考えず入れるだけ入れました。

この辺りは『養生』HPのコメントにも書いたのですが、その出勤先が罵詈雑言で暴力当たり前な現場でして、最初は当然後悔しかなかったのですが、酷い接し方をしてきた上司に、なんか少しでも褒められると「あれ? 頑張ってみようかな」とか「あれ? 向いてるかも」と、我慢すればするほどコンサートの仕事が好きになっていくような感覚が強かったです。同時に「これでもう作品作りはしなくてもいい」とも思っていました。

 

連勤をしていると仲良くなるバイト君もできて、Aさんとよく話すようになりました。Aさんとは同じ仕事を任されるのが多く、休憩中に一緒にいる時間が長くなりました。咳が全く止まらない自分のことを「大関」と呼んでくれました。

 

豪雨が降った夜勤の大型コンサート撤去の日。自分とAさんは単管パイプを鳶職の人から受け取ってパイプの山に並べていく作業中でした。雨でパイプが滑ったのか、自分の足にパイプの先を落としてしまい、膝の皿が剥がれるんじゃないかというような痛みがありました。でもここでやめたら、なんというか情けないというか、お金がもらえないと思って黙って続けました。自分の作業スピードが遅くなったので、Aさんの方にパイプの流れが集中してしまい、疲れてフラフラに。そんな時に荒い運転のフォークリフトがそばを通り、足元がおぼつかないAさんの足にフォークの先が激突しました。衝撃だったのはそれだけではなく、その運転手が「殺すけど! 大丈夫か!」と言ったことです。殺すけど!って。でもフォークをぶつけられたAさんは「あー大丈夫っす!」とニコニコしながら沢山お辞儀をしました。

 

「痛めた…」とパイプの作業を終えたAさんが足首を押さえていました。全然大丈夫じゃありませんでした。自分も膝を痛めている中、大丈夫っすかと話しかけると、「大丈夫大丈夫」と返してきました。「そっちも大丈夫?」と聞かれて、自分も大丈夫!と返していました。本来なら怪我を絶対申告するべきなのに、申告したら自分なんかが周りに迷惑をかけてしまうと思っていて、現場においてバイト君という駒としてでしか価値を発揮しないとされている状況がよりそうさせていたかもしれません。

 

明け方になると撤去が終わりました。雨も止んで晴れて、足の痛みも慣れてきた時、すっからかんになったスタジアムを見て綺麗だと思ってしまっていました。これで気持ちよく寝れるという達成感。帰り道、Aさんと牛丼屋で食べました。あの時は本当に終わるか分からない辛い作業だったし、痛いこともあったし、というかまだ痛いし、こんな目にあうなら自分が今日いなくても別によかったんじゃないかとAさんに話すと、「無駄なことはないんじゃない」という言葉が返ってきました。そして「でも、今日で俺コンサートは辞めるね」とも。

 

その言葉が印象的で、なぜか自分も、もう夜勤をやめよう、作品を作ろうと思いました。そして膝の痛みと共に、夜勤や日雇労働をした体験を彫刻作品に取り入れていきました。

 

そして舞台もやるようになって2023年の夏頃、本橋さんと一緒にいわき総合高校の卒業公演『Thing Thing Thing』の脚本・演出を担った時、その作品でも劇中歌となっているウンゲソング『あらしのよるに』を知りました。

 

『あらしのよるに』は絵本作家・木村裕一さんによる同名の絵本が発端となっているようで、本橋さんの歌とその歌詞を聞いた時、上記に書いたような豪雨だった夜勤明けの朝の記憶が引っ張り出され、繋がりました。歌詞の「むだなことなんてなにもないから」という言葉と、今までの体験から作品を立ち上げていた自分と、本橋さんとの出会い(丘田ミイ子さんによる演劇最強論-ingの特集インタビュー記事に詳細がございます)も含めて、こんな感じでリンクできたことに驚きました。

 

本橋さんとは『Uber Boyz』というウーバーイーツを始まりとした作品で共演していたし、何より自分はウンゲツィーファの作品と、人柄が好きだったので『養生』へオファーしました。

 

本橋さんの演技を見て、キャスティングは大正解だったと思うと共に、ウンゲツィーファ常連組でゆうめいにも出演歴のある黒澤多生くんにも出ていただき、長く作品を一緒に作ってきた空気感みたいなのも感じて、というか二人とも本当に演技が良過ぎて、かなり特別な稽古期間と本番でした。

そしてウンゲツィーファの作品は最高に面白いので、こちらも是非観ていただきたく、随時チェックをお願いいたします。

 

4月に次回公演があるとのことで、詳細をお待ちください。

クリエイションと生活について

育児をしながらのクリエイションは、本当に家族だけではなく、支えてくれる人がいなければ絶対に成立できない稽古期間でした。保育園への送り迎えの間に稽古をしていたのですが、子どもの体調によっては休んだり病院へ行ったりしなければならず、そして何より土日(土曜保育もあるけど)は周りの人たちに、子どもをみてくれるよう助けを何度も頼んでおりました。何度も頼んでしまうことが申し訳なくなってもいました。ですがそれでも頼ってとおっしゃってくださる方々にお願いさせていただき、稽古場の方々も暖かく、本橋さんもお子さんがおり「自他共に育児優先で」と進んだ稽古でした。稽古期間は他の現場との兼ね合いもあって、今までの新作公演では最も短かったのですが、なんとか上演まで辿り着けることができました。大きな反省としては、戯曲の完本をかなり早めること、体調不良者が出た際(家庭でも仕事場でも)のリスクヘッジを再度検討すること。スタッフキャスト関係者の皆様によって、本当に何度も助けられました。

 

今回正直言いますと、心理的な面と作品の評価においては(自分にとっては)ここ数年でベストでした。なんといいますか今作は、相手にあわせて好きでないことを好きだといってしまう自分の癖みたいなのをなくそうと思っていました。先ほどの「大丈夫か?」と言われたら「大丈夫です!」みたいな。多分自分は「こうしたほうがいい」と言われるとすぐにそうしようと考えてしまうタイプです。この「こうしたほうがいい」は、マウントのとりあいや「自分がやってあげている」的な意識ではなく、自分の感覚と相手の感覚が合っている瞬間とリスペクトにこそ、そのコミュニケーションが成立しやすいと思いますが、先ず互いの感覚をすり合わせていないのにそうしようとしてしまっていたことが今まで多々ありました。演劇という様々な種類があって作り方も千差万別という特徴を無視し、特定の種類だけしか認めない基準に準ずると絶対に先はないことを知り、そして「こうしたほうがいい」根拠というものを深く自分も尋ねることを怠っていたのに気付いたのは、団体を大きくしていくために必要と言われていた予算の限界に直面したからでした。岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートできた『ハートランド』(※3/1 受賞いたしました)でしたが、予算を大きくはみ出しただけではなく、ゆうめいの主軸となる自分が、体験から創作をすることにおいて最も迷っていたことが一番の発端で、生活に大きくダメージを負いました(『ハートランド』の内容的な話でいうと創作側がダメージを負うべき内容だとも思いますが)。後述のりょこによる記述もありますが、この1年は貯金を切り崩して無給が続き、外部の仕事をすることによって主催公演での赤字を取り戻し続けています。今思うと、この状況と夜勤をしていた当時の自分が少し被っているような気がして「これでもう、ゆうめい公演はしなくてもいい」とも思っていました。

 

スズナリの野田さんから下北沢演劇祭に出ないかとお声がけいただき、『養生』を作ることになったのですが、そこでもう一度原点回帰といいますか、ゆうめい内で話し合った時に夜勤を描こうと提案しました。あの時と現在が重なっているように思えたのと、かつアートディレクター・映像作家のりょこが「苦しんでいた会社員時代が報われるような作品がみたい」と話したのがきっかけでした。そして目指したのは「なるべく、作品作りだけではなく生活と仕事の感覚が合っている状態でクリエイションを行う」ということでした。ゆうめいは作品的にも全体のディレクション的にもりょこの存在がかなり軸となり、りょこがいなければ全く成立してないので、本当に数々の根幹を担っていただき、心から感謝しています。小松大二郎にもビジュアル出演をしてもらい、まだまだですが結成9年目のゆうめいの過去を振り返る創作でもありました。

 

そして今では、『養生』を再演したいとゆうめいが思えるような上演が実現できました。大変ありがたいことに満員御礼が続き興行的にも黒字でした。

 

体制と内容的な反省点も踏まえて、さらにブラッシュアップしていきたい所存です。

作・演出・美術について

戯曲を書きながら演出と美術を考えることは、彫刻を作っている時と似ている感覚があります。『養生』は全体のストーリーよりも先に、脚立の美術を思い付きました。今作においては記憶と体験を発端とし、リファレンスがネットの画像や切り抜きではないものを作りたいと思い立ち、今回の美術は自分の夜勤体験の記憶を頼りに造形しました。そしてその美術を作品の中に取り入れ、元美大生が登場するというストーリーを設計していきました。

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『養生』開演前の観客の皆様のご入場ですが、裏を通り、一度舞台に上がってもらってから客席についてもらう導線もコンセプトに取り入れていました。序盤、橋本役を演じる俳優が舞台を指し、「そこ(舞台)に飛び込んだら過去にいけるかもしれません」としたのは、観客が既に足を踏み入れた舞台を過去として共有する意図がありました。わたしの過去であり、あなたの過去であるという導入をするための舞台装置として、開幕前にインスタレーションとしても美術を存在させようとしていました。

今回は予算の関係で美術(大道具費・小道具費)を10万円以内に抑えるという目標を達成しました。 「スズナリ規模でちゃんとした公演にするには10万円でやってくれる(できる)人はいない」というのをよく聞いたので、だからこそ予算という軸では到達し得ない別軸のベストを目指そうと思いました。低予算というのも内容とかなりリンクするものがあったので、あえて挑んでみました。その美術を様々な効果でより高い新しいところに導いてくれたスタッフである音響の今里さん、照明の阿部さん、舞台監督の多生くんには本当に感謝しかないです。

目の前に立体物として存在する彫刻と演劇にはかなりの親和性があると思っています。舞台上の生命と人為的に用意された造形物と空間が、なぜ今この場に存在するのかという問いも含めて楽しめるのが舞台芸術だと感じています。

田中祐希から丙次の改名について

すごくいい名前です。ネットで検索すると彼の名前しか出てこないのも良いなと思っています。写真はいつも舞台写真を撮影してくれております、佐々木啓太さん。

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ゆうめい主宰の丙次は、本当に未知の提案を演技からしてくれるのと、なかなか出せないような正直な瞬間がいくつもあります。演技も存在も眼を惹くので、コメントにも書きましたが、どうか彼を別のバイト・仕事先に導いてください。せめて心身が安心できる場所で仕事をしてもらうため、当然自分も頑張りますが、彼への出演オファーをいつでもお待ちしております。また、丙次につきまして自分へもご相談は随時可能なので、皆様のご連絡を心よりお待ちしております。

 

本当に素晴らしい俳優なので、どうか何卒、よろしくお願いいたします。

最後に

本橋さんに『あらしのよるに』を演奏してもらい、夜勤明けの身体のような感じで歌うエンディングムービーです。

スズナリや舞台上の様子も見えますので、是非ご視聴ください。

 

改めまして、観客の皆さま、ご支援してくださった方、気にかけてくださった方、本橋 龍(ウンゲツィーファ)さん、黒澤多生(青年団)さん、音響の今里 愛(Sugar Sound)さん、音響オペレーターの深澤大青さん、照明の阿部将之LICHT-ER)さん、照明オペレーターの関口詩葉さん、制作の高橋戦車さん、制作助手の笹本彩花さん、記録・稽古場写真の佐々木啓太さん、映像収録の川本 啓さん、そしてご協力いただいた当日運営や仕込みバラシに参加していただいた皆様、宣伝にご協力いただいた皆様、関係者の皆様、プレイガイドであるローソンチケットの皆様、ご協力いただいた劇場、ポスターを貼らせていただいたお店、稽古場、そして、下北沢演劇祭の皆様、下北沢ザ・スズナリの皆様、誠にありがとうございました。(池田 亮)

『養生』出演・制作総指揮 ゆうめい主宰 丙次

改名のきっかけと『養生』を終えて

丙次です!自分は改名したきっかけと『養生』を終えての感想について書きました。

改名したきっかけ

改名したいと思ったのは去年の秋頃。

「事務所に入らずフリーの俳優でバイトばかりの今の生活を変えたい、けど変えることができない」

「もっと俳優としてステップアップしたい」

「生まれ変わりたい」

と思ったことがきっかけです。

 

漠然とですが、映画を観ていてもエンドロールで今の自分の名前が流れて来るイメージが全く湧かない、みたいな。「売れたい」と思ってても、思ってるだけで「そもそも本当に売れたいのか?」と自問自答が始まり、なかなか行動に移せない。そんな自分のことが嫌だけど好きだったり。何年も続いてる現状から、自分じゃない誰かになれたら今までできなかったこともできるようになるのかなと思い改名してみました。

 

正直、名前を変えることが怖くなって改名の決意が揺らぐこともあったのですが、今回『養生』の作品の中に入れこんでもらえたことで達成できました。池田くんに感謝です。

 

改名は自分にとって足掻きですが、これを必ずきっかけにしたいし、ダメだったらまた改名するし、改名じゃなければ違う足掻きを続けていこうと思っています。

『養生』終えての感想

観に来てもらった方から「作ってくれてありがとう」と言ってもらえたことが心から嬉しかったです。感じ方は観た方それぞれで違うだろうし、評価が作品の全てではないですが、参加した作品を観てもらい「ありがとう」と言ってもらえることはこの上ない幸せでした。

 

キャスト・スタッフの皆さま、ザ・スズナリの皆さま、支えてくださった皆さま、観に来てくださった皆さまに心から感謝を申し上げます。

ありがとうございました。

追記

先日スズナリに劇を観に行って感じたことです。スズナリの客席は舞台と距離が近く、横にも広がり過ぎていないぎゅっとした環境で観ることできるのですごく集中して観やすかったです。会場の高揚感を感じました。開演前、階段下には沢山のお客さんが集まっていて支配人の野田さんと、ちかさんが活気良く列を誘導されていて、受付時からグルーヴが生まれていました。観た劇はものすごく面白かった。劇場の力、人の力をもっと信じていきたいです。(丙次)

『養生』メインヴィジュアル・アートディレクター りょこ

はじめに

こんにちは、はじめまして、りょこと申します。
ゆうめいでは宣伝美術周り・グッズ・映像・WEB・SNS・企画・予算周りなど、現場以外での作業を中心にしながら、ざっくり「アートディレクター」と名乗っています。
ゆうめい以外ではフリーで映画やMVなどのアニメーションや映像、イラストレーションを作っています。
ゆうめいには立ち上げからいますが、2020年までは会社員をしていたので本格的に参加したのは2021年『姿』(再演)からです。
会社員時代はテレビ制作会社のあと、アニメーション制作会社で働いていました。
2022年から1児の母、2024年いままもなく2児目が産まれるところです。(※2/27追記:産まれました!)

『養生』によせて、思うことがたくさんあったのであとがかせてください!
(「まえがき」リスペクトで、関係なさそうなエピソードがたくさんです。)

生活と演劇

2022年と2023年のゆうめいの作品発表で、私は完全に演劇に疲弊してしまいました。
幼い子を育てながら演劇をすることは、(正確には私は稽古場や劇場には居ませんが、それでも「演劇をしている」と思っているのでそう書かせてください。)とにかく相性が最悪です。

0〜2歳ごろの育児、とにかく手がかかります。
生きることと生かすこと、こんなにも自分の全てのリソースが必要だと思いませんでした。
演劇、とにかくとにかく時間とお金がかかります。
しかも終演するまで諸々の結果はわかりません。お客さんと座組みのみなさんの反応、作品の意味、損益結果…

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「やりたいこと」「やらなければいけないこと」「できると思ったけどできなかったこと」があると、育児の疲れとストレスは本来の何倍にもなりました。
私はつわりがひどい体質だったので、妊娠期間中から仕事・作品・趣味「諦めた」ことがたくさんあったように感じてそれも苦しかったです。
作品作る、作れると思うことも辛いから、だんだん人のも自分のも見なく考えないようにしました。仕事も断っているうちに来なくなって、どうやって仕事していたかしていけばいいのかわからなくなりました。
また、パートナーの時間と脳のキャパを容赦なく拘束する演劇が心の底から憎かったです。

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気分転換に友人を呼んだりもしました。
お話しして、その間は久しぶりに「大人と話せたこと」「自分がまだ社会と繋がっていること」を心の底から喜んで、でも普段と違う環境で崩れる生活リズムを立て直すのも自分で、それらに困ってもどうやって助けを伝えればいいのかわからなくて、解散後いつもより溜まった家事や育児の作業をする元気がなくて、結局ひどく落ち込みました。

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2023年の『ハートランド』ではJ-LOXの助成金を獲得できなくて、収益もそれほどあげることができず700万円ほどの損失となりました。
合同会社ゆうめいは池田と私の2人で運営していたので、この損失によってここから現在まで無給で、これまでの貯金を切り崩して暮らしています。
子どもとの暮らしはお金がかかる上に毎月収入0円、どころか貯金が減っていく。
少なくとも私は自分の会社員時代の貯金を子どものために温存するつもりだったので、これもまた心を大きく削りました。
生活とお金、どちらも演劇に奪われているとすら思いました。

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子どもが保育園に入ってほどなくして『養生』の公演が正式に決定しました。
それからさらにしばらくして第二子が産まれる予定であることがわかりました。

 

公演期間と正産期が嘘みたいに丸々かぶっていたので、今度は清々しく「もう無理だ!」と思うことができました。さまざまな人に助けを求めました。
「時間がある時よかったら遊んでね」のニュアンスではなく「困っているので家まで助けに来てください!!!できれば何度も!」ということをはっきりと伝えました。
そしてたくさんの人が助けてくれました。
私が「きっと迷惑だ」と思って頼めなかったことも、頼んでみると本当〜に楽しんでやってもらえて、たくさんの大人で子どもを囲んで愛でると、こんなにも心穏やかに過ごせるのだということを知りました。

 

その中の一人は俳優の高野ゆらこさんで、その日々のことをnoteにも書いてくださいました。
https://note.com/yuracco/n/n20c63621ac44

 

ゆらこさんとはゆうめい『姿』で繋がって、今や「ジェネリックおばあちゃん」として孫に大変に愛を注いでくれています。
小谷浜ルナさん、丙次(元:田中祐希)や、ゆうめいの作品で繋がった児玉磨利さん、光瀬指絵さん、島田桃依さん、五島ケンノ介さんたくさん助けて頂きました。

感謝に言葉が足りません。本当に、本当にありがとうございます。

これからもどうかよろしくお願いします。

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例えば無理して乗り切れる限度が100だとして、今回は家庭内だけで生活を乗り切ることが「無理200」くらいだと最初からわかっていたので、うまくギブアップすることができました。
でも思えば、子育てしていると「明日は無理70くらいで乗り切れるかな」と思っていたけど、いざやってみると結果「無理120」くらいの日々がたくさんありました。
また「無理70〜80」くらいの日が長く続くと、ある日突然「無理300」くらいの重力がのしかかって完全に動けなくなって、市役所の地域みまもりセンターに電話したりしました。

 

遊びに来る友人たちもたくさん「困ったらいつでも連絡してね」と言ってくれたけど、一体「無理いくつ」からが自分と相手にとって価値の均衡がとれた「困った」なのかを見定めることができませんでした。
大人にとっての「困った」時間ではなく、子どもにとっての「生活」について助けを求めねばいけなかったのかもしれません。

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「演劇と生活」で書き始めたけど、言いたいことが多すぎて何が言いたいのかわからなくなってきました。
申し訳ないです。
演劇で消耗して、演劇で救われています。『養生』という作品ができて本当に良かったです。

 

『養生』にはブラックな環境で働いた私の会社員時代もたくさん反映されていて、今の生活になる前の、過去の自分も丸ごと救われ包まれた気持ちです。

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そう思いながら『養生』では託児サービスを導入できませんでした。予算が足りなかったからです。さまざまな人への体験よりも、目先の利益(公演後の生活)を優先しました。申し訳ありません。
(もしも私が知らないだけで、託児サービス導入への助成金などありましたら教えて頂きたいです。)

 

そもそも演劇やイベントは、託児サービスは利用するまでのハードルが高い(申請期間の締切が早い・会場と託児所の場所が遠すぎる、など)ものも多いと感じています。
また「未就学児入場可」となっていても、いざ行ってみると爆音(幼児の耳への影響が心配になるレベル)・静寂(他に幼児がいなくて、とっても気を遣う)などの演出があって、なんでもかんでも「入場可」ならばOKだとも思わず、難しいですね。

 

今後ゆうめいだけに限らず、なにか改善していきたいです。

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「演劇」も「生活」もきっとまだ続いていくので、懲りずにいつか続きを書かせてください。

集客・SNS運営・WEB制作について

以下の項目から、演劇の制作サイドの方と共有したく、書かせていただきます。

界隈は違いますが、TOKYO PiXEL. shop & gallery大図まことさんが連載していらっしゃるnoteをいつも楽しみに、背筋が伸びる思いで読んでいます。

私もがんばろうと思えます。

イラストレーター、手芸作家向け「仕事とお金の授業」はじまります。
https://note.com/oozumakoto/n/nd3a9fe0341c1

 

自分が得た知見の中で「これは役に立つ」「うちでもやってみようかな」と思ってもらえることがあればいいなと思い、書いてみます。

※私は演劇制作のプロではなく、ゆうめいという小さな団体の中でもがいているだけなので、もしもっとこうした方が・こういう方法もいいよという案がある心優しい方がおりましたら、いつか意見交換させていただけますと幸いです。

これまでのゆうめいWEB制作

ゆうめいではWEBサイト制作に力を入れて取り組んでいます。

ビルダーはWIXで、プレミアムプランに加入しています。

立ち上げ当初から池田が一人で構築し、『姿(再演)』から特に力を入れて特設サイトを作りはじめました。
https://www.yu-mei.com/sugata2021

キャスト・スタッフそれぞれの個別プロフィールが表示される仕様です。作・演出の作業もありつつ池田は凄まじい気合でサイトを作り、この時のフォーマットが今まで活きています。

『養生』のWEB制作

『養生』ではりょこと池田、それぞれのコンテンツや改善案を合わせる形でWEB制作をしました。

 

私としての目標は「『養生』にまつわる全てのコンテンツが集約された特設サイト」です。
- 仮ページ・本番ページの仕込みと整備(りょこ・池田)
- ヴィジュアル・素材制作(りょこ・池田)
- CM動画(池田)
- 特報動画(りょこ)
- 観劇まえがき(池田)
- メディア欄・トピック欄の開設更新(りょこ)
- 舞台写真欄(りょこ)
- Togetterまとめ(りょこ)

 

特に取材や特集記事は、これまでせっかくいい記事を書いて頂いても流れていってしまうことがもったいなく感じていたので、『養生』という作品のポートフォリオを作るイメージで取り組みました。

 

※ゆうめいの取材記事を何度も書いてくださっている丘田ミイ子さんは、取材のたびに記事を「ゆうめいのツリー」に繋げてくださってます。

こちらのアーカイブ方式もとても素晴らしく、いつも感謝の気持ちです。
https://x.com/miikixnecomi/status/1759478562057544185?s=46&t=rowbfp3944Ku4S9w66ah-A

 

「『養生』の観劇まえがき」は、前回『ハートランド』での新作広報の苦戦を活かして、どんな作品かを誠心誠意に事前に明らかにするように池田が時間をかけて丁寧に作成しました。

また、公演があると他ページのアクセスが増えることもわかっていたので、『養生』情報解禁前までに「NEWS」「ABOUT」「MEMBER」ページもこまめに整理しました。

チケット変動と広報

『養生』はとにかく予算がない公演でした。

手数料負担を軽くするために、プレイガイドをローチケさんのみに絞りました。

チケット売上を常に把握したかったのと、前から興味もあったのでチケット発売から売上推移を毎日トラッキングしてみました。

《売上枚数の伸びと日付グラフ》
※関係者チケットと当日券があるので、実際にはこれより多くの方に作品を観て頂けています。

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特筆すべきイベントポイントはこちらのあたりでしょうか。
- 12/24:チケット発売開始
- 12/30:『姿(再演)』戯曲アーカイブ公開
- 1/1 :『姿(再演)』『娘』『巛』過去作品アーカイブ映像配信開始
- 1/21:Twitter Blue承認・広告開始
- 1/30:岸田國士戯曲賞ノミネート発表
- 2/9:『テラヤマキャバレー』開幕
- 2/17:『養生』開幕

このグラフのトラッキングを始めたのが1/4あたりで、チケット売上0枚の日があることがショックすぎて、その日からTwitterの毎日更新を始めました。

また今回Twitter Blueに課金して、少額ですが広告運用なども行いました。

(余談ですがTwitter広告、設定がとても難しく、承認されるまで時間がかかった上、ミスをして予算を1日で溶かしてしまいました。。。初めてご使用される方は本当に気をつけてください。)

 

ほか推薦コメントを頂いたり、CM動画や特報、伸びる養生紙フライヤー やポスター掲示、サイン会企画など足掻きながら、岸田國士戯曲賞ノミネートに後押しされ、さらに開幕後のお客様の口コミでチケットが伸びて最終的な売上目標を達成することができました。

最後にはホッとした着地になったものの、2月に伸び率の角度が変わるまで毎日不安で吐きそうな気持ちでした。

もしよく演劇好きでよく観るよという方がこの文章を読んでいらっしゃいましたら、できるだけ早くにチケットを購入して頂けると、主催団体がホッとします。

過去90日間アクセストラフィック

近日までの過去90日間のWEB全体のアクセストラフィックはこちらです。

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1/30の岸田國士戯曲賞最終候補ノミネートでアクセス増えて喜びました。本番開幕してから観客の皆さまの口コミで比にならないほど伸びて、感謝の念に堪えません。

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こちらはページ別のトラフィックです。

02_エントリーページごとのトラフィック.png

 

『養生』特設サイトと合わせて他ページも観て頂けて良かったです。

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時間帯別トラフィックはこちらです。

03_時間帯別ごとのトラフィック.png

過去作品アーカイブ公開が月曜だったり、開幕が土曜で口コミが広がったのが日曜だったりしたので、曜日の差はあまり当てにしていません。

以前まで夜の方が見て頂きやすいのかと思っていましたが、思いのほか午前中(通勤時間?)や昼(昼食休憩?)も見て頂いているようだったので、SNSの更新タイミングは、リツイート含めて朝・昼・晩でこだわりすぎずざっくり動かしました。

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SNS運用に関しては、Twitter本社さんが「#広告の科学」という記事を公開しています。流し読みしかできてないですが、落ち着いたらちゃんと活かせるところを拾いたいです。
https://marketing.twitter.com/ja/insights/kakusan

あとはフリンジさんが出してくださるアイディアもとても参考にしています。

こちらの相関図の記事もおもしろく、次回以降ぜひやりたいです。
http://fringe.jp/blog/archives/2024/02/11201400.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

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この【集客・SNS運営・WEB制作について】の項目については、制作サイド向けとはいえ、全体公開にすべきかどうか大変迷いました。

お客さまの気持ちを考えたら、簡単でもいいのでパスワード配布方式などにして、見れる方を限定すべきだったかもしれません。

 

しかし、演劇の企画・運営に関われば関わるほど、規模と背負うリスクが大きくなればなるほど、キャスト・スタッフの方々の予算への関心のバラつきがとても辛い時がありました。

 

テレビ制作会社時代も「あの構成作家さんは若い時に演劇で主宰やってて、○○○万円借金背負ってたらしいよ」とかよく聞きました。

 

「あの作家さんは○○○万円自腹でやってるよ(だから池田もまだ自腹で頑張れるよ、の意)」の言葉を池田が他の方からかけられているのを聞いたこともあります。

 

いま、家族と将来をかかえて○○○万円のリスクを背負って公演をする立場になった時、「このチラシ配布に〜万円の価値」「このグッズに〜万円の価値」「この美術に〜万円の価値」「このキャストに〜万円の価値」「この〜に〜万円の価値」…この公演の価値、すべてに考えない時がありません。

 

それは本当にすべて「主催の自己責任」でしょうか?

座組全体が、みんなで予算や集客について本気で考えたら、もっといいアイデアがでて、もっといい作品や、お客さまの出会いや、ひとりひとりの良い将来に繋がるのではないでしょうか?

ゆうめいに限らず、制作に限らず、全てのセクションの作品制作に関わる方に、なにか興味を引く資料のきっかけになればと思い、公開させて頂きます。

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キャスト・スタッフ、作品、子どもとの暮らしの素晴らしさも言い尽くせないけど、私の角度からしか見えないことを優先して書きました。

もし『養生』や、ゆうめいの作品を害された気持ちになられた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

 

ただ池田が書いていたように、近年のゆうめいの作品にはブレがあって、その要因のひとつは、自分がなにを考えているのか周りに共有しなかったこともあると思うのです。

 

こういう人も作り手のひとりだけど、ゆうめいの作品は作品として変わらずおもしろいものを作るひとりでいたいと思いますので、今後も楽しんで頂けますと幸いです。

 

ありがとうございました。(りょこ)

Schedule

​2024年2月17日[土] 〜 20日[火] 全6

yojo_date

Ticket

​チケット一般発売(先着式)

​満員御礼 ありがとうございました

●ローソンチケット(Lコード:36251)

https://l-tike.com/yo-jo/

●演劇最強論-ing

https://www.engekisaikyoron.net/

手数料無料 チケット代のみで購入

前売り一般 / 3,800円 前売りU-39 / 3,500円

売り学生 / 2,500円

当日(一般・U-39・学生一律) / 4,500円 

応援チケット / 5,000円 ※『養生』ステッカー付

※日時指定・全席指定席

※車いすでご来場の方はゆうめい制作部へ事前にお申し出ください

※前売U-39・前売学生のチケットは当日受付で年齢のわかる身分証をご提示ください

※未就学児は入場不可

※公演中止の場合を除き、ご予約の変更、払い戻しは致し兼ねます

Access

下北沢 ザ・スズナリ

〒155-0031

東京都世田谷区北沢1-45-15

「下北沢駅」東口(小田急線)・京王中央口(井の頭線)より徒歩4-5分

詳細はこちら

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